「だからどうした」高円寺編のあのタイマーが好きだった
「だからどうした」で好きな技法というか、ゆたか天才だなと思う描写?シーン?があって。
バイト休憩中のふたりの会話→片方の休憩が終わったので切り上げる、というところで、後輩が休憩時間計るタイマーかけててそれが鳴る、という描き方をしたんですよね。
まず「突然音が鳴ることで、観てる側も急に会話への集中を強制中断される」効果がある。
そしてタイマーという、人の意思が介在せずただ時間が経った事実を伝える道具を使うことで、ふたりの関係性に干渉することなく(片方が逃げ口実のように切り上げるといった見方にならないよう)シーンを終われる。
さらに「バイトの休憩時間をきっちりタイマーで計るいじらしい几帳面さ」という人物描写までできる。(休憩時間タイマーで計るヨコヤマ、すごく分かりみが強いし、いるよねこういう人、と思う)
よく「休憩終わる側が手元の時計を見て切り上げる」みたいな描写は見かけるけど、それってだいたい物語の都合だし、この方法はスマートだなと。*1
もしかしたら私が知らないだけで使い古されてる有名な技術かもしれないけど。
でも、観て楽しい脚本の腕って「どれだけ名言を生めるか」なんかより、こういう、作劇の都合で人間を雑にしない技術の積み重ねなんじゃないかな。
芝居のタイプによっては「わあ!ここで次のシーンに変わるんだぜ!」みたいな転換も大好きだけどね。
その乱暴さというか、作劇の都合だというところにどこまで自覚的かという部分かが重要なんだと思う。
*1:こういう描写でその台詞や行動を「人間」にできるかは、こちらは役者にかかっていて、もっと話したかったのかそんなに気にしてなかったのか、急いでいるのかその場から離れたいだけなのか、というディテールをつめて芝居したら、充分に人物描写にはなるんですけどね