アカイモリ企画

両生類とは水でも陸でも生きれるということでなく水と陸がないと生きられないものたちです

わたしと落語と「鷺とり」と

ゆたかが「落語やりたい人!」と企画を立ち上げた。

昨年末のモノローグ演劇祭を経て、自分一人で自分のケツを拭ける状態でお客様に自分の面白いと思う表現を見てもらう、ということに味をしめていた私は、迂闊に「参加します!」とか言ってしまった。

落語、マジで今まで縁も興味もなかったので、そもそも噺選びの時点で、どうしたもんかな、となる。ニワトリの話を探す。マジで見当たらない。桂枝雀さんの「とり」という話のテキストを見つける。読む。惚れる。動画を探す。見る。なんだこの人、めっっっちゃ好きだ。めたくそ面白い。すげぇ。

落語、って、なんか、荒っぽかったり、皮肉っぽかったり、世の中を斜に見るイメージが勝手にあったんだけど、それがひっくり返った。こんなのありなのか。愛嬌があって、でもどこかおちょくってるようなところがあって、グイグイ引き込まれて、それでいてちょっと突き放すようなところもあって。

落語は古くさいと思ってる人が多いだろうけど、とは、落語好きの人がパンピーに勧める時の常套句だけど、そういう点でいうと、確かに上方落語ってそもそも何言ってるかわかんないんじゃないかとか、そんなイメージが特にあった。勝手に。私の中では。こんなに耳心地いいものだとは知らなかった。

ちなみに枝雀さんの話を完コピしようとしたけど3日で諦めた。これが人前に立つのが1年先とかなら違うけど、時間がなさすぎたし、テキストで覚えてしまうと、迷子になった時に客前で立ちすくんでしまう。江戸のことばでなら入れて繋げそうなアドリブも、上方のことばでは難しい。イントネーションが気になってノッキングしてしまう可能性も高い。

その頃は同じ枝雀さんの「鷺とり」を鳥つながりで聞いて、演目をこれにすると決めていたのだが、上方のことばで完コピするのはやっぱり諦めた。その代わり、古典ということで、色んな人の同じ噺を聞いた。

落語のここがすごい、と第一に思ったのは、同じ噺を色んな人がやってるのを聞き比べできることだ。解釈の違い、表現の違い。演劇だとこうはいかない。というか、比べるにしても、演出の腕なのか役者の腕なのかわかんないし、そもそも一本が長いから同じ内容のもの何度も観るのに気力やら体力やら使う。

「鷺とり」はほぼ一目惚れで決めたのだけど、この噺で私はよかったと、色々な人の演目を見て思った。なんというか、一番しっくりきた。まず、私は自分が演るにあたって、サゲが「アァなるほどそういう結末ね」としっくりくるものがよかった。あと"女を演じ"たくなかった。これは後から気づいたけど。

あと、落語というのはやっぱり基本的にその時代の価値観で書かれているから、それが自分の価値観と違うものはそこが引っかかって楽しくなかっただろうなとも思った。基本的にポリコレ棒ぶん回しBBAなので……。現代では~なんてフォロー入れても全然いいんだろうけど、それ私が演る意味はないかなと。

自分が「笑えるもの」と「笑えないもの」には敏感でいたいし、だからこそ、茶目っ気ならまだ許せるけど悪意がある(自覚の有無を問わず)人が出てくる話で現代に通じるリアルさのある話だと引っかかるな、というのはあった。sageる意図はないし、共演してた方の噺は演技力も相まってとても素敵だったのだけど、たとえば『厩火事』なんかは「人を試すために大事なモノ壊すとかマジ地雷」って思っちゃって駄目だった笑

落語、演じ方にもよるだろうけど、共感性羞恥が強い人にはしんどい展開の話が結構あるよね。パターンとして「モノを知らない人が、知ったかぶりで痛い目に合う」という展開は落語の定番も定番なワケですし。そこを笑い飛ばせるようにやるのが腕なのかもしれない。そもそもそういう人へはnot for youだよ、という部分もあるのかもしれないけど。

いま読み返してた枝雀さんの本にも書いてあったけど「鷺とり」はいわゆるファンタジーで、しかも動物を獲ろうとした男がヘマして痛い目みるという、ヒトの悪意が介在しない話だったから、このチョイスはよかったなーと。

本来のサゲの「一人救おうとして四人しんじゃった」はダークすぎて、というか、枝雀さんのを見たらもう、これは腕がないと笑いに変えられないオチだと思ったので、江戸の改変バージョンでやった。どちらもサゲの、ポーンと非現実に吹っ飛んでく感じが好き。んなアホなと。あー馬鹿話だったんだなと。

上方落語の「アホ」というのは、あれはいいですね。江戸落語の「バカ」という言葉、あれはね、なかなか強い言葉だなと私は思うので。今回の女性共演者さんには「ばかー!」とひらがなのような発声で(伝われ)上手いことやってる人たちもいて、あれはとてもよかったですけどね。私にはハマんないやつだ。

もっと江戸落語も、色んな人のを聞くべきなのかもな。準備期間となるべき1月後半が色々ありすぎて、ぎゃー時間が少ないどうする?演目しばりで見まくるか、という選択をしたので。江戸落語でも、しっくりくる人がいるんだろうな。出会ってないだけで。やだー!これからめちゃめちゃ楽しいじゃん!!!

今回は、演出・出演:俺!ってこったろ?じゃあ俺が楽しいと思う方向に進むわ!!というポリシーでひとつずつ選択していったので、たぶん落語の常識を知ってる人からすると「トーシロが色気だして見てらんねぇや」って部分も多かったと思うけど、でもやりたいことやれたからスッキリしてる。後悔もぜんぶ私のものになる、のは、嬉しいね。誰かのせいにできないものね。アンタそうやって逃げてばっかりきたものね。

なんか羽織って二ツ目以上じゃないと着ちゃ駄目って聞いたけど、初挑戦なのに着ていいもんなのか?て主宰のゆたかにきいたら「厳密にはそういう感じらしいけどこの会はそういうのじゃないし」と言われたから、それならと白い羽織探したし、それを鷺逃すところで脱いだらお客様に面白がってもらえたし、

なんかこう、私コレいいと思う!ってのを、思いつきでも挑戦してみてよかったな。怒られたら次考えればいいんだもんな。髪型もほんとはまとめるつもりだったんだけど、着物きてとりあえずポニテでネタ見せやったら、記録写真みて「着物にポニテ可愛いやんけ」と思って、本番でもイキにしてみたら落語知ってる方にも新鮮がってもらえたし。鶏冠に見立てたカンザシもさしてね。ポニテにカンザシは確かにカンザシの意味ないし、意味不明ちゃ不明なんだけどね笑 ブローチみたいなもんですよ。そこにあったら可愛いと思ったの!

 

ここまで書いて力尽きてた笑

寄席三十九楽しいっす。

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