アカイモリ企画

両生類とは水でも陸でも生きれるということでなく水と陸がないと生きられないものたちです

匿名観劇の可能性について考える

「誰かを応援したい人」には二種類の人種がある。
推しに認知されたい人と、認知されたくない人だ。

 

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さまざまな応援の形

 

認知されたくないんだよ

認知、されたくねえー!!
応援してる人がいるということは推しに伝わってほしいのだけど
そこに私個人のパーソナリティや属性を付随してほしくない!

「あの作品の時は喜んでくれたけど今回ハマらなかったのかな」とか
そういう風に気をもんでほしくない!
というか自分がそうやって気をもみたくない!

面白いものは面白い、つまんないものはつまんない!
感想は客出しで言える時と言えない時がある!
スッと帰ったのもドチャクソ面白くて噛みしめたいからとか
そういう日もあるんだよ!!!

でも認知されずに観るの難しい

名前もバレたくないし、でも偽名使ったら
受付で「え、あなたが“紫薔薇”さん?」みたいな顔されても嫌だし
制作さんが知り合いで「えなんで偽名?」みたいな顔されるのも嫌なんだよ!

当日券アタックすれば予約名を伝えずに済むけど
それで完売したら涙も出ないし、当日券の値段が違うこともある。
劇団サイドからしても、観たい気持ちがあるお客さまなら
席を確保してもらった方が絶対助かるでしょ前売りで買ってほしいわそんなもん。

小劇場のチケットバックシステム

小劇場では「役者扱い」でチケットバックが決まるシステムが主流で
その役者が何枚チケットを売ったかが、その役者の集客面での評価になる。

でも「ちょっと気になるかな」くらいの人から買いづらいんだよ!
この人また来てくれるのかなとか期待もさせたくないし
そもそも推しに自分個人を認知されたくないんだ。
「ひとりのヒト」でいいんだ。数でかぞえてくれ。

あと誰扱いで入ったみたいなのがギスギスしても嫌じゃん!
これは自分が内輪にいるから知ってる部分でもあるけど
予約表の張り出しがある場合は、どのお客さんが誰扱いで来るかも
だいたいわかることが多くて(現場によっては違うのだろうけど)
お客取った取られたみたいになるの気まずいじゃん。

もし今のままのシステムでも匿名予約が可能になったら
お客さんサイドがそのあたりもコントロールできるようになると思うんだよね。
「今回はあなたを観に来たよと伝えたいから普通に名前で予約」
「知り合い多いからこの人から匿名予約して、客出しの時にみんなに挨拶しようかな」
とかってさ。

技術面をどうするか、ハードルは何か

そんなわけで、匿名で予約したりチケット買うという選択肢が
もっと生まれればいいのにと思う。

いわゆるチケットガイドがやっているような
クレカ決済なりコンビニ支払いを採用できれば、手段としては
「チケット買取・入手→受付で名乗らず劇場で観劇」
は可能になると思う。論理だけでいえば。

架空予約とかに関しても、チケット買い切り方式を採用すれば
劇団側の金銭的な痛手は防ぐことができるし
現物があるチケットだと発送時の住所名前は?問題が出るけど
たとえば電子チケットなんかだったらそのあたりもクリアできる可能性がある。

あとはクレカ支払いなどの劇団側の導入コストや
事前に日時を決めてチケットを買うハードルの高さ(リセールの難しさ)あたりで
どれだけお客さんが食いついてくれるかが読めないという課題はあるかな。

今はPayPayなど電子決済サービスも増えてきて
なんとかうまく組み込めないかなと思うのだけど。

なんでこんな話を始めたかっていうと

最近推しアニメが劇場版やってて、足繫く通ってるんですが
誰と会う心構えをせずに自分の好きな作品を客席で拝受し
そして誰に感想を伝えなきゃ、挨拶しなきゃという心構えもなく帰れるの
びっくりするほど気が楽だな……という感情が生まれまして。

対社会モードの自分を作らないで享受できる娯楽。
それに対して、自分がいま小劇場観劇に対して抱いている
心的ハードルについてもちょっと見えてきた気がしたのです。
というわけでこの記事はその言語化によるまとめと思考メモでもあり。

推しに認知、とか色々言ってしまったけど
自分の肌の合うかわからないジャンルとかの作品を
「私が観ます!」て宣言しないで気楽に観れたらいいなって。
みんなそこまで気にしてないって?
でも知り合いの俳優さん出てるとなんか気まずいんだもん。
「私の出演作を観に来てくれてありがとう!!!」みたいな
そういうノリで接せられてもドキドキしちゃうというか。
それでハマんなかったときは無駄に罪悪感生まれちゃうし。

現在のシステムを否定したいわけじゃない

小劇場は対面コミュニケーションが魅力のひとつ。
それはもう確かです。本当に確かです。

物販で台本や推しのグッズ手に取るのも楽しみですし
板の上であんなにすごい芝居してた人と、数分後に自分が談笑できるって
びっくりする体験だなと思うのです。

そして興行的には、チケット代でまかなえない部分を
グッズで補填するためにたくさん「推し」てもらいたい、
それは劇団側の戦略としてもわりと正攻法なのだと思います。

でもそのコミュニケーションがほぼ「必須」になっている現状は
ある層が小劇場に足を運ぼうというきっかけを
みすみす逃している気がするんですよね。

「選べる」ようになったらどうだろうか。
「私が推してるんだ!と伝えたい人」も
「陰ながらだけど応援したい人」も幸せになれないだろうか。

もちろん、小劇場での観劇って身体が物理で向かわなきゃならないから
劇場内で気づいたりしますし、完全に認知されないのは無理です、たぶん。

でも「交流を持ちたい人」と「交流を持ちたくない人」がいること
そういう感覚が共有されていったら
どちらの人も、観劇が楽しみにできるんじゃないかな。

話はズレるけど「観るため前売券」が欲しい

ところでわたし今まで全然映画館に行ったことなくて、最近行くようになって気づいたんですが
映画の「前売券」とか「ムビチケ」ってすごいいいですよね。
日時が分かってなくても、作品を観る権利を確保できる。

KINEZOなんかだと、席が埋まってなかったら
観たくなったその日に劇場行けばいいわけで。

そりゃチェーンで全国展開できるシステムと資金力があるから
可能なのはわかってはいるのだけど
たとえば2ケ月先のスケジュールなんてわからない人にも
前売券買ってもらうために、もう少しそういうのに近い方法が提案できないかなと
思ったりしてしまうのですよね。

 

全然話がとっ散らかったけど

色々と書いてしまいましたが、この手の議論が散々されてるのは
うっかり10年くらい小劇場界隈眺めてるので重々承知してます。

理想はあれど、現実は厳しい。
まあでも、書き残すことは必要かなと。
それが実現にこぎつかない理由も、時代や時期で変わってくるだろうし。
システム面だったり、需要の問題だったり。

架空予約だって5年くらいかけておんなじことでてんやわんやしてるものね……。
これは誰が悪いとか進歩がないとかそういう意味ではなく。

あ、でも専業じゃない制作スタッフが慈善活動になりがちで
そしてトラブルや過去の事例を共有したり受け継げてないなってのは
肌感覚だけではあるけど、感じています。
そして制作と運営もまた厳密には違うっぽいからなあ。

そのあたりは自分も門外漢というか勉強不足なので
前述のような提案に対する実例とか失敗事例あったら教えてほしいです色々と。

自分の団体からやってみろって?
そんな体力ないんだよな……うふふ。

昔ギャザリングシステムというのが小劇場で流行ってて(ゼロ年代後半かな?)
その回のお客さんが集まれば集まるほどチケット安くなるという仕組みで
そういうのは取り入れてたっけなあ。
うーん。ちょっと提案するか考えてみよう。

あと、ここ一年くらい、主流の小劇場劇団運営の議論とか読めてないから
話がめっちゃ遅れてたらごめんなさいと、予防線だけ。

話は戻るが最後にこれだけ

「小劇場を観たいお客さんが、必ずしも交流を求めてるわけではない」

それが言いたかったんです。
そういう人もいること知ってもらう、気づいてもらうことで
新しいサービスやシステムが生まれるかもしれない。

小劇場を愛する人たちが、演じる側も、支える側も、受け取る側も
みんなが幸せになれますように。